請願第4号 (平成30年) 法令及び議会の決定に基づき、閉会中に委員会が継続審査を履行すべき義務を負うことの確認を求める請願
受理日:平成30年6月4日
付託委員会:議運
議決日:平成30年9月28日
議決結果:不採択
緒方夕佳
主 旨
一 継続審査とは、地方自治法百九条九項に定める「常任委員会は議会の議決により付議された特定の事件については、閉会中もなおこれを審査することができる」という条文に基づいた、委員会のみに適用されるものであること。
二 地方自治法に基づき、委員会が「議会閉会中の継続審査」を本会議で要求し、議会として「閉会中の継続審査」を決定した件について、委員会が履行する義務を負うことを熊本市議会として確認すること。
三 熊本市議会会議規則第百三条「委員会は閉会中も引き続き特定の事件の審査または調査を行う必要があると認めるときは、議長にこれを要求することができる。この規定による要求があった場合には、議長はこれを会議に諮らなければならない」の解釈と運用を地方自治法に基づき行うこと。
四 「閉会中審査とは、議会で継続審査になった場合、次の議会までに委員会を開催して継続となった案件の審査をし、審査した結果は次の議会で報告され、再度本会議で結論が決定されること」を議会規則等に明記し、議会のホームページ上に掲載すること。
理 由
(一)地方自治法百九条九項は、「会期不継続の原則」の例外としての「閉会中の継続審査制度」を定めたもの
議会の定例会は、会期ごとに独立したものです(会期不継続の原則)。定例会中に提案された案件について、会期中に結論が出なかった場合は、次の定例会に引き継がれることはなく、審議未了、廃案となり消滅してしまいます。しかし、案件によっては、その会期中に結論を出すことができない場合もあるため、会期不継続の原則の例外として、議会の議決によって行われる、「委員会における議会閉会中の継続審査」があります。
これを定めたものが、地方自治法百九条九項「常任委員会は議会の議決により付議された特定の事件については、閉会中もなおこれを審査することができる」という条項です。
この制度は本会議ではなく、委員会にのみ適用されるもので、特定の会期中に議了できない理由があって、次の会期までの閉会中(定例会と定例会の間の期間)に、引き続き審査を行うというものです。
(二)議会運営委員会が「議会閉会中の継続審査」を本会議で要求し、議会として議会運営委員会の「閉会中の継続審査」を決定した
議会基本条例の制定を求めた請願(請願二号)について、十二月議会で審議され、「継続審査」ということが決定された旨の連絡を議会から受けとりました。
委員会及び本会議議事録によると以下のようになっています。
【議会運営委員会(二○十七年十一月二十九日)】
○くつき信哉 委員長 それでは、請願第二号については、各会派から閉会中の継続審査との御意見がありましたので、継続審査の要求についてお諮りいたします。
請願第二号について、継続審査を要求することに御異議ありませんか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○くつき信哉 委員長 御異議なしと認めます。
よって、請願第二号は継続審査を要求することに決定いたしました。
【本会議(二○十七年十二月十二日 第四回定例会】
○澤田昌作 議長 次に、日程第百二十六 請願第二号「熊本市議会は、議会(議員)と行政の関係のあり方を見直し、議会基本条例を制定し、わかりやすく開かれた議会運営の実現を求める請願継続審査の件」を議題といたします。
本件に対する議会運営委員長よりの継続審査要求書は、お手元に配付いたしておきました。
それではお諮りいたします。
議会運営委員長の要求のとおり、継続審査を認めることに御異議ありませんか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○澤田昌作 議長 御異議なしと認めます。
よって、本件は継続審査を認めることに決定いたしました。
(三)上位法である「地方自治法」に基づき「熊本市議会議会規則」を解釈・運用すべ
き
十二月議会で継続審査が決定された「請願第二号」が閉会中に審査されなかったために、三月議会の本会議において、紹介議員である緒方ゆうか議員が以下のような旨の質疑を議会運営委員長に行っています。(「議事録」が公開されていないため、中継録画メモによる)
○緒方ゆうか 議員
@この請願に関して、議会運営委員会においてどのような議論があったのでしょ
うか。
Aなぜ、四ヶ月の間に結論を出すことができなかったのでしょうか。
Bこれから六月議会までの間にどのように審議を進めていく予定でしょうか。
以上三点を議会運営委員長にお尋ねいたします。
○くつき信哉 委員長
議会基本条例は、議会における様々な事項を定めるものであるから、まずは現状の
課題も含め、内容を十分に研究すべきとの意見があったものです。よって各派で協議されていくものであると考えております。
○緒方ゆうか 議員
まずは現状課題の把握からされるということでした。様々な現状課題の把握がなさ
れると期待しております。そして各会派で議論がなされていくということでしたが、その議論のけん引役を議会運営委員長には期待しております。六月議会まではふた月もないかもしれません。どうぞ計画を持って臨まれることを期待します。
このように、熊本市議会にあっては、「継続審査」を地方自治法百九条九項に基づいて「閉会中」に審査をするのではなく、次の定例会への先送り案件として、以下に示すように議会事務局も含めて、解釈・運用している実態が明らかになりました。
議会事務局とは、以下のようなやりとりをしています。(質問は文書、回答は口述)
一)「請願の継続審査」の根拠となる「法規・例規」の条文を示し、その「法規・例規」の議会事務局の解釈をお示しください。
二)その解釈に基づけば、請願について、委員会及び議会で決定した場合、その後、委員会及び議会には法令上、どのような行為上の義務が生じますか。
三)ほとんどの自治体の議会では、以下のことが明文化されています。
「当該議会で継続審査になった場合は、次の議会までに委員会を開催して継続となった案件の審査をします。これを『閉会中の委員会審査』といいます。審査した結果は次の議会で報告され、再度本会議で結論が決定されます。」
@熊本市議会では、上記と同様な手続きが履行されていますか。
(回答)継続審査の審査期間は閉会中及び次の定例会期中までと認識している。
A請願二号については、次の議会までに委員会を開催せずに審査をしていません。
議会事務局では、この手続き上の瑕疵について、議会運営委員長や議長と話をされましたか。
(回答)していない
B話をされているのなら、その内容をお示しください。
(回答)なし
C議会事務局からされていないのなら、なぜされていないのか、その理由をお示しください。
(回答)
熊本市議会会議規則第百三条「委員会は閉会中も引き続き特定の事件の審査または調査を行う必要があると認めるときは、議長にこれを要求することができる」という条文が根拠。「閉会中も引き続き特定の事件の審査を要求することができる」という条文なので、閉会中の審査は「次の定例会の会期中も含めた継続審査」と解釈していた。
地方自治法百九条九項に定める「継続審査」が「閉会中審査」であるということは、ご意見として伺っておく。
以上のことから判ったことは、地方自治法に基づいた議会規則の解釈・運用がなされていないということです。自治体が制定する条例や規則・要綱は、根拠法となる上位法(条約・憲法・法律)に基づいて制定し、解釈・運用されるのが法令を遵守することになりますし、議会としての説明責任を果たすことになります。
(四)議会規則等などの各条文を、上位法に基づき解釈し直し、即時、運用することは説明責任を果たし、信頼度を高めることになる。
以上示してきたように、議会の申し合わせ事項や慣習等によって、上位法の規定や趣旨に反した議会運営等が行われてきたと思われます。このようなことを防ぐためには、議会基本条例について一刻も早く議会および委員会で実質的な議論を始め、地方自治法に基づいた議会の役割の視点から、議会規則・申し合わせ事項・慣習等を見直すことです。なぜなら、熊本市の条例や規則・要綱の制定・見直しの際に、「逐条解説」において上位法に基づくものであることを各条文の解説に入れる作業を行うことで、条文の意味を確認でき、条例の正確な解釈と運用が実現できるからです。
以上、請願いたします。