請願第7号 (平成19年) 「最低賃金の大幅引き上げと全国一律最賃制の法制化を求める意見書」を国に対して上げることを求める請願
受理日:平成19年6月14日
付託委員会:経済
議決日:平成19年6月29日
議決結果:不採択
益田牧子
主 旨
今年度の最低賃金改定にあたり、今通常国会で審議されている「最低賃金法の改正」に
おける「生活保護に係る施策との整合性」について、安倍首相が「その精神を活かす」こ
とを求めていることを重視し、表題の意見書を国に対して上げていただきたい。
理 由
今、わが国は「格差と貧困」「ワーキングプア」という言葉に象徴されるように、この間
押しすすめられてきた労働法制の規制緩和政策によって、大企業が史上空前の利益を更新し続ける一方で、働くものの三分の一が非正規労働者、若年層では実に半数が非正規労働者で、しかもその大半が年収二○○万円以下の低所得を強いられるという悲惨な状況が続いています。さらにいま、定率減税の全廃による住民税の増税で、県民生活は、また大きな負担を強いられている状況です。
熊本県労働白書によれば、熊本県では「格差と貧困」の傾向がいっそう強く示され、労働者にとって非常に厳しい状況が続いていることが具体的に示されています。その意味で、最賃審議会に対し熊本県の労働条件を進言する熊本県の役割は非常に重要です。同時に、地域別最低賃金額が今まさに多数を占めるその低賃金労働者の命とくらしと直結しているといっても過言ではない状況を考えるとき、地方最賃審議会と熊本県・県議会の役割はまさしく重要です。
憲法第二五条、労働基準法第一条および、第三二条に則るならば、この国の法が定める最低時間給は、一日八時間働けば、最低限度の生活が営めるものでなければなりません。しかし、現在の最低賃金額は、最低限度の生活を営むどころか、健康に生きていくことすら保障できない金額です。
熊本県労連では昨年に引き続き、今年の二月の一ヵ月間、いまの熊本の地域別最低賃金六一二円で一ヵ月を生活してみる試み「最低賃金生活体験運動」を実施しました。結果は、今の最低賃金額が、いかに現実とかけ離れたものであるかということを証明しています。すべての参加者に共通する感想は「他者とのかかわりを持つ生活は到底できない」「病気は絶対にできない」というものでした。
昨年来、厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会で審議が重ねられ、「生活保護に係る施策との整合性」を求める内容の最低賃金法改正案が閣議決定され、いま国会で審議中です。「最低賃金額大幅引き上げ」の方向性での国会審議についてはおおいに歓迎するものですが、同時に「格差と貧困」を解消するための全国一律での最低賃金制度の確立、また法の中に規定された差別的条項の存在など、時代が求める改善内容も含んだままの法案です。いま、憲法そして戦後労働法の上に立つ、すべての人の生存権を保障するに足る最低賃金制度の確立が強く求められています。
同時に、最賃を決定する重要な柱のひとつである「事業主の支払能力」について、適切な中小企業振興策を県の段階でも国の段階でも図ることが求められています。経済産業省が底上げ戦略を打ち出してはいますが、「新自由主義路線」の上に立ったもので、抜本的な改善策とはなり得ていません。熊本県労連では、地域活性化プロジェクトを発足させ、「ショッピング・イン・マイタウン」運動を提唱し、「わたしたち(地方)のくらしと雇用はわたしたちの手で守りましょう」という運動を展開しはじめています。今後、地方に暮らす、わたしたち全員に求められている重要な運動の視点だと考えます。
以上の理由により、「最低賃金の大幅引き上げと全国一律最賃制の法制化を求める意見書」を、地方自治法第九九条の規定により提出していただくよう強く要請いたします。