意見書第14号 種苗法改正案について慎重な審議を求める意見書について
議決日:令和02年6月24日
議決結果:否決
熊本市議会会議規則第13条第1項の規定により意見書を次のとおり提出する。
令和2年6月24日提出
熊本市議会議員 西岡誠也
同 村上 博
同 上田芳裕
同 田上辰也
同 福永洋一
同 山内勝志
同 吉村健治
同 島津哲也
熊本市議会議長 紫垣正仁 様
意 見 書 (案)
種苗法の一部を改正する法律案について、十分な国民的論議を尽くし、慎重に審議を行われるよう要望いたします。
(理 由)
日本国内で開発された品種の海外流出防止を目的として、種苗法の一部を改正する法律案が今国会に提出されています。近年、日本の農産物の苗木が国外に持ち出され、現地での栽培が広がり、格安で流通する事例などが発生しております。多額の国費を投入して開発した品種が海外で勝手に使われ、それによって日本の農家の海外の販売市場が狭められ、場合によっては、逆輸入により国内市場も奪われかねません。こうした不正に歯止めをかけ、優れた国産ブランドの保護を目指すという法改正の趣旨自体は理解できます。
今回の改正には、登録品種について、農家が収穫物の一部を次期作の種苗として使う「自家増殖」が、これまでの「原則自由」から「原則禁止」になり、育成権者の許諾なしに使えないようになることが盛り込まれています。
もちろん、規制の対象は登録品種に限られ、全体の1割未満で、それ以外の一般品種はこれまでどおり「自家増殖」でき、また登録品種の大半は、公的機関が開発者で、安価な許諾料さえ払えば「自家増殖」の継続は可能となっています。しかし、既に現行の種苗法の下でも、原則自由のはずの「自家増殖」が禁じられた品種は、2016年までは82品種だったのが、今では400品種近くに急増しています。法改正により許諾制が盛り込まれれば、許諾に関する事務手続や費用負担の増加などが見込まれ、農業経営等に影響を与えることが懸念されます。海外の大手種苗メーカーが生産した種子を日本国内で品種登録し、高額な許諾料を設定する可能性もあります。
2017年制定の農業競争力強化支援法で、都道府県など公的機関が有する「種苗の生産に関する知見」を多国籍企業も含む民間企業に提供するよう求め、2018年には都道府県に優良なコメや麦の普及を義務付けた主要農産物種子法が廃止され、民間企業の種子生産参入が後押しされたことに続き、農家の「自家増殖」が原則禁止となれば、安価で優良な種を供給する公的種苗事業が一層揺らぐのではないかという懸念が拭えません。
よって、国及び政府におかれては、種苗法の改正案について、新型コロナウイルスの感染が拡大する中、拙速な法改正を進めず、地域農業や農業者、消費者に大きな影響を与えることのないよう、十分な国民的論議を尽くし、慎重に審議を行われるよう強く要望いたします。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出いたします。
令和 年 月 日
議長名
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
農林水産大臣