意見書第13号 新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる感染症指定医療機関及び受入協力医療機関への財政支援を求める意見書について
議決日:令和02年6月24日
議決結果:否決
熊本市議会会議規則第13条第1項の規定により意見書を次のとおり提出する。
令和2年6月24日提出
熊本市議会議員 西岡誠也
同 村上 博
同 上田芳裕
同 田上辰也
同 福永洋一
同 山内勝志
同 吉村健治
同 島津哲也
熊本市議会議長 紫垣正仁 様
意 見 書 (案)
感染症指定医療機関及び受入協力医療機関の経営状況を安定させ、第2波の発生に備えた医療提供体制を構築するため、更なる財政支援措置を講じられるよう要望いたします。
(理 由)
新型コロナウイルス感染症の蔓延により全国に発せられた緊急事態宣言も段階的に解除され、一定の収束の兆しが見えてきましたが、今後、第2波、第3波の発生も予見され引き続き予断を許さない状況です。
これまで感染の発生から拡大、ピークを迎えるに当たって、多くの医療機関と医療従事者が段々と疲弊していく様子は、まさに地域医療体制が崩壊する寸前の危機的状況であったと考えます。
このような状況下で、国においては新型コロナウイルス感染症緊急経済対策関係経費の補正予算の中で、感染拡大防止策と医療提供体制の整備として、緊急包括支援交付金や医療機関等へのマスク等の優先配布等が行われました。
しかし、新型コロナウイルス感染の長期化が避けられない以上、医療機関や医療従事者へ実効性のある支援を連続的に行っていく必要があります。
先日、日本病院会など医療関係3団体が公表した「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況緊急調査(速報)」によると、感染拡大の影響で病院経営は大きな打撃を受け、特に感染症患者を受け入れた医療機関の状況がより逼迫していることが示されました。
この調査では、回答のあった1,049病院の4月の医業利益率が、前年同月に比べマイナス9.0%、このうち新型コロナウイルス感染症患者を受け入れている病院ではマイナス11.8%、また、一時的に他病棟を閉鎖せざるを得なかった病院ではマイナス16.0%という結果でした。
これらの結果は、患者が感染を避けるために通院を控えたことや、病院側が外来、入院等を抑制したり、感染防止のために入院ベッド数を減らしたりしたことなどが考えられます。
新型コロナウイルス感染症患者受入病院の患者数の減少度合いを詳しく見ても、外来患者数がマイナス21.2%、初診患者数がマイナス41.7%、入院患者数がマイナス14.7%、手術件数がマイナス19.6%、救急受入件数がマイナス35.7%と、病院経営の指標となる数値がいずれも大きく減少しており、新型コロナウイルス感染症による影響の甚大さが分かります。
本市においても、感染症指定医療機関と複数の受入協力医療機関が新型コロナウイルス感染症患者の受入れを行っています。
指定医療機関では熊本医療圏及び上益城医療圏の指定病床8床を受け持っていますが、その数を優に超える感染症患者を受け入れるために他の一般病床を閉鎖転換して感染症患者の治療に当たっています。
また、受入協力医療機関では熊本県の要請を受け、感染症患者受入待機ベッドとして一定数の一般病床を空床にし、待機又は感染症患者受入れを行っています。
これらの医療機関では、他の入院患者や医療従事者への院内感染を防ぐため、病室の隔離や病棟の縮小が必要となり、その結果平常時より相当数の入院ベッドが利用できなくなっています。そのため、入院患者を抑制するために入院予定日の延期や手術の延期・中止を余儀なくされています。
厚生労働省は、4月から新型コロナウイルス感染症に対応した診療報酬を増額しましたが、他の患者の入院抑制や手術の中止に係る医業収益のマイナス分には遠く及びません。
自分の治療計画が大きく変わった患者の不安感も大変大きいと思いますが、これまで必死に新型コロナウイルス感染症対応を担ってきた指定医療機関や受入協力医療機関についても、今後の病院経営に与える影響には大きな不安を抱えています。
今後、新型コロナウイルス感染症の蔓延が一旦収束したとしても、感染症患者がゼロになることは考えられず、いつ第2波、第3波が来てもおかしくありません。
このような状況では、特に指定医療機関等においては蔓延前の通常医療体制に完全に戻すこともできず、当分の間、臨戦態勢を取り続けることになります。そのため、この態勢が長引けば長引くほど対応病院の経営状況は先細りとなり、医療従事者の離職などの現場離れも起き、第2波の発生に対する地域医療体制が脆弱なものになってしまいかねません。
よって、政府におかれては、下記事項について実現されるよう強く要望いたします。
記
1 新型コロナウイルス感染症患者を受け入れた感染症指定医療機関及び受入協力医療機関に対し、外来、入院、手術の抑制等により生じた収益減少分に相当する額について最大限の損失補塡を行うこと。
2 新型コロナウイルス感染症に対応した診療報酬について、更に増額を行うこと。
3 厚生労働省が実施する感染症患者を受け入れる病床の確保に係る事業においての金額(1万6,190円/床/日)を、1床当たりの平均収益単価程度に引き上げること。また、算定対象日数を「病床を確保した日から入院前日まで」を「病床を確保した日から退院日まで」に改めること。
4 感染症指定医療機関には今後の急な再蔓延に備え、防護具、人工呼吸器及びPCR検査機器等の資機材を平常時から備蓄できるよう予算措置を行うこと。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出いたします。
令和 年 月 日
議長名
内閣総理大臣
厚生労働大臣