意見書第25号 日米貿易協定の承認の取り消しを求める意見書について
議決日:令和元年12月18日
議決結果:否決
熊本市議会会議規則第13条第1項の規定により意見書を次のとおり提出する。
令和元年12月18日提出
熊本市議会議員 西岡誠也
同 福永洋一
同 上野美恵子
同 那須 円
熊本市議会議長 倉重 徹 様
意 見 書 (案)
国内の農林水産業や地域経済に大打撃を与える日米貿易協定の承認について、取り消されるよう要望いたします。
(理 由)
国内の農林水産業や地域経済に大打撃を与える日米貿易協定承認案が12月4日、参議院で可決となり、国会で承認されました。
日米貿易協定は、5カ月という前代未聞のスピードで、交渉内容も経過も国会や国民に一切秘匿したまま合意されたものであり、既に発効しているTPP11、日欧EPAに加えて日本側の関税、非関税措置を縮小させ、農産物の市場開放、自由化を一層もたらすものです。しかも政府は、野党が求めた審議の前提となる資料の提出を拒み続け、国会や国民への説明責任を果たさない姿勢を露骨に示しています。
安倍晋三首相は、日米双方にとって「ウィンウィン」と誇りますが、その実態は、日本が「72億ドル分の米国産農産物の関税を撤廃・削減する」ことを認める一方、米国は日本製自動車や同部品の関税撤廃を見送っており、日本の一方的な譲歩であることは明白です。特に、譲許表に自動車関連の関税撤廃を明記したと偽りの説明をしてまで国会と国民を欺こうとしていたことは極めて重大です。
政府は、「TPPの範囲内」に収まったと主張していますが、TPPはもともと輸出大国や多国籍企業の利益を最優先し、際限のない市場開放を推進するもので、TPP水準でも農漁業や産業に重大な影響を及ぼします。
本協定は、米国産牛肉の関税率をすぐにTPP参加国と同じ税率まで引き下げるとされていますが、加えて、その税率での輸入枠をTPPとは別に設けました。しかも、輸入量がそれを超えると、即座に低関税輸入枠自体を拡大するための協議をする規定まで盛り込まれています。
政府は、本協定の発効で「実質GDPを約0.8%押し上げる」としていますが、この試算は継続協議となった日本製自動車や同部品の対米輸出関税の撤廃を見込んだ架空の計算です。そうした試算でも国内農産物の生産額が最大1,100億円減少すると見込まれています。本協定が離農を加速させ、食料自給率を低下させることは明らかです。
日米共同声明は、本協定の発効後、「関税や他の貿易上の制約、サービス貿易や投資に係る障壁」などで「交渉を開始する」としており、文字どおり日米FTAにつながるものです。日米デジタル貿易協定は、独占的利益を追求する米国のIT企業を保護する協定にほかなりません。
食料主権、経済主権を破壊する両協定の国会承認は、断じて認められません。
よって、国におかれては、日米貿易協定の承認について、取り消されるよう強く要望いたします。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出いたします。
令和 年 月 日
議長名
衆議院議長
参議院議長