意見書第5号 生活保護基準引き下げの撤回を求める意見書について
議決日:平成30年3月26日
議決結果:否決
生活保護基準引き下げの撤回を求める意見書について
熊本市議会会議規則第13条第1項の規定により意見書を次のとおり提出する。
平成30年3月26日提出
熊本市議会議員 田尻将博
同 上田芳裕
同 西岡誠也
同 上野美恵子
熊本市議会議長 澤田昌作 様
意 見 書 (案)
市民生活全般に影響を及ぼす生活保護基準の引き下げを撤回されるよう要望いたします。
(理 由)
生活保護は、国民の生存権とそれを守る国の責務を定めた憲法第25条に基づいて、国民に健康で文化的な最低限度の生活を保障するための制度です。格差と貧困の拡大により、この制度を必要とする国民が増え続けています。
しかし、2018年度予算案及び国会に提出予定の生活保護法改正案によって、生活保護の生活扶助基準額が18年10月分から段階的に削減され、最大で5%の減額となり、67%の生活保護世帯の受給額が減少します。また、母子加算についても、平均2割削減される予定になっています。
生活保護基準は、最低賃金や地方税の非課税基準、各種社会保険制度の保険料や一部負担金の減免基準、就学援助などの諸制度と連動しており、低所得者層を中心に生活保護を利用していない市民生活全般にも多大な影響を及ぼすことが懸念されます。
今回の見直しは、低所得者の中でも最下位の所得階層と生活保護世帯の消費実態を比較し、生活保護基準を第1・十分位層(所得階層を10に分けた下位10%の階層)の消費水準に合わせるという方法で行われました。しかし、生活保護を利用する資格のある人のうち実際に利用している人が占める割合(捕捉率)が2割以下と言われている状況において、第1・十分位層の中には、生活保護基準以下の生活をしている人たちが極めて多数含まれています。この層を比較対象とすれば、際限なく基準を引き下げ続けることになり、「健康で文化的な最低限度の生活」の水準自体を引き下げ、貧困のスパイラルを深めることになりかねません。見直し案を審議した社会保障審議会生活保護基準部会の報告書でも、検証結果を機械的に当てはめると子どもの健全育成のための費用が確保されないおそれがあることや、一般低所得世帯との均衡のみで生活保護基準を捉えていると絶対的な本来あるべき水準を割ってしまう懸念があることに注意を促しています。
よって、政府におかれては、「健康で文化的な最低限度の生活」を維持し、貧困の連鎖を防ぐため、下記の事項を講じられるよう強く要望いたします。
記
1 生活扶助基準の引き下げを撤回すること。最低生活費の算定に当たっては、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する額にすること。
2 子どものいる世帯の生活保護基準をこれ以上引き下げないこと。
3 生活保護世帯における貧困の連鎖を解消し、同世帯の子どもたちが一般世帯の子どもと比べて特段の制約を受けずに育つことができるようにするため、子どもの貧困問題や貧困の連鎖の観点から生活保護制度のあり方を検討すること。
4 年金、年金制度の最低保障機能を高め、高齢者・障がい者の貧困の問題に抜本的な取り組みを行うこと。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出いたします。
平成 年 月 日
議長名
内閣総理大臣
厚生労働大臣