意見書第4号 生活保護世帯の子どもたちの大学等への進学に関する意見書について
議決日:平成30年3月26日
議決結果:否決
生活保護世帯の子どもたちの大学などへの進学に関する意見書について
熊本市議会会議規則第13条第1項の規定により意見書を次のとおり提出する。
平成30年3月26日提出
熊本市議会議員 田尻将博
同 上田芳裕
同 西岡誠也
同 上野美恵子
熊本市議会議長 澤田昌作 様
意 見 書 (案)
進学意欲のある生活保護世帯の子どもの大学等進学を一層支援するため、所要の施策を実現されるよう要望いたします。
(理 由)
生活保護は、国民の生存権とそれを守る国の責務を定めた憲法第25条に基づいて、国民に健康で文化的な最低限度の生活を保障するための制度です。
今回の見直しで、生活保護世帯の子どもたちの大学等への進学について、入学時の一時金支給などの支援が強化されたことは前進と言えます。しかし、大学等に進むと家族から独立したとして、別世帯の扱いとする「世帯分離」の解消は見送られました。
生活保護世帯の子どもが大学等に進学すると、「世帯分離」により、当該子どもにかかる生活扶助費が支給されなくなります。また、生活保護世帯の子どもが実際に大学等に進学すると、国民健康保険料の納付が義務付けられることになることに加え、家族に頼らずに奨学金やアルバイト収入によって自らの学費や生活費を賄わなければならず、奨学金を借りたとしても、返済の負担が重くのしかかることになります。一方、アルバイト代など高校生の時の蓄えは受験料や入学金などに使途が制限され、それ以外は収入認定され、その分生活保護費は減額されることになるのが現状です。
そのため、進学意欲があっても経済的負担を考えて進学を諦めるケースがあり、生活保護世帯の子どもの大学等進学率は、2016年度で33.1%(内閣府「子供の貧困の状況と子供の貧困対策の実施状況」。厚生労働省社会・援護局保護課調べ)にとどまり、一般世帯の進学率の半分以下となっています。
一方、2014年1月施行の「子どもの貧困対策推進法」は、子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、教育の機会均等を図ることを強調しています。また、政府が同年8月に閣議決定した「子供の貧困対策に関する大綱について」では「子供の将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、また、貧困が世代を超えて連鎖することのないよう、必要な環境整備と教育の機会均等を図る子供の貧困対策は極めて重要である」としています。
よって、政府におかれては、下記の事項を実現されるよう強く要望いたします。
記
1 1970年に高校進学についての「世帯分離」が廃止されたことに鑑み、生活保護世帯の子どもが大学等に進学することを一層支援するため、大学等に進学する子どもを「世帯分離」して生活保護から外す運用を改めて「世帯内就学」を認め、当該子どもの分の生活保護費を支給すること。
2 大学等に就学しながら生活保護を受ける子どものアルバイトや奨学金等の収入のうち、大学等の授業料、教科書・参考書代、通学交通費その他就学に必要な費用については、収入として認定しない取り扱いとすること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出いたします。
平成 年 月 日
議長名
内閣総理大臣
厚生労働大臣