熊本市議会トップ

意見書・決議 審議結果一覧

詳細情報

件名

意見書第24号 労働者の声を踏まえた真の「働き方改革」の実現を求める意見書について

本会議議決結果

議決日:平成29年12月12日
議決結果:否決

内容

熊本市議会会議規則第13条第1項の規定により意見書を次のとおり提出する。
 
  平成29年12月12日提出
       
熊本市議会議員  田尻将博
同        上田芳裕
同        西岡誠也
同        上野美恵子

熊本市議会議長 澤田昌作 様

                        意  見  書 (案)

長時間労働を解消し、過労死を根絶するため、労働者の声を踏まえた真の「働き方改革」を実現されるよう要望いたします。

(理 由)
政府は、反対の声が強い高度プロフェッショナル制度及び裁量労働制の対象業務拡大をセットにした「残業代ゼロ(定額働かせ放題)」法案と、罰則付きで残業時間の上限を設け、長時間労働を是正するとする残業時間の上限規制法案を一本化し、「働き方改革」関連法案として提出・成立を目指しています。
労働時間、休日、深夜の割り増し賃金の規制を取り払う高度プロフェッショナル制度は、8時間労働制が適用されず、時間外労働や休日労働をしても残業代が出ないこととなり、過労死しても自己責任とされてしまうなど、長時間労働を助長することになることは明らかであります。また、何時間働いても一定時間しか働いたことにならない裁量労働制の対象業務の拡大は、成果を出すために、労働者を時間と体力の限界を超えて働かざるを得ない立場に追い込みかねません。
また、残業時間の上限規制の法制化は画期的ですが、これまでの月45時間、年間360時間(特別条項付き36協定で無制限)を原則としつつ、繁忙期には特例で年間720時間を認め、2〜6カ月の平均で休日労働を含めて月80時間、1カ月では休日労働を含めて100時間未満の残業を認めており、極めて不十分なものと言わざるを得ません。また、健康確保措置の中身についても不明確であります。これでは、過労死ラインの残業も容認し、長時間残業に「お墨付き」を与えかねません。
さらに、「働き方改革」関連法案は、労働時間の規制の在り方や雇用形態別の違いによる待遇格差に関する法規制、雇用対策に関する国の基本政策の見直しといった重要テーマから成る8法案(労働基準法、労働安全衛生法、じん肺法、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律、労働契約法、雇用対策法)を一本化するものであります。今の働き方に関する多岐にわたるテーマを一括りにするのではなく、法案ごとに丁寧に審議されるべきであります。さらに、労働政策審議会において労働者代表が主張しているように、規制強化と緩和という真逆の方向性をもつ条項を一括りに労働基準法改正案として扱うべきではありません。
「働き方改革」関連法案は、「企業にとって柔軟な働かせ方」、「企業にとっての生産性向上」という視点が前面に出ており、労働者の長時間・過密労働を抑制し、生活時間をどう確保するかという視点が極めて弱いです。労働時間は、働く者にとって最も基本的な労働条件であります。労働者の健康と安全を確保するための最低限のルールである労働条件規制を揺るがすことは断じて許されません。痛ましい過労死や過労自殺が相次ぎ、重大な社会問題となっている我が国においては、全ての労働者が、健康とワーク・ライフ・バランスを確保しながら、健やかに働き続けられるよう、長時間・過密労働を規制する法整備こそ求められています。労働者の声を踏まえた真の「働き方改革」を実現するため、労働時間規制を遵守し、全ての労働者を対象とする「労働時間の量的上限規制」や「休息時間(勤務間インターバル)規制」などの長時間労働抑止策を法的強制力のある形で導入すべきであります。
よって、政府におかれては、長時間労働を解消し、過労死を根絶するため、下記の事項について誠実に対応されるよう強く要望いたします。

                            記

1 「長時間労働を助長するおそれがなお払拭されておらず、実施すべきではない」との労働政策審議会における労働側意見を踏まえ、「働き方改革」関連法案に高度プロフェッショナル制度や裁量労働制の対象業務の拡大を盛り込まないこと。
2 過労死ラインの残業を容認する上限規制の導入ではなく、労使協定による時間外労働の上限を1週間15時間、1カ月45時間とする「厚生労働大臣告示」を法律へ格上げすること。
3 全ての労働者を対象に、EU労働時間指令を参考に、24時間につき継続して11時間以上の休息時間を与える「休息時間(勤務間インターバル)規制」を導入すること。
4 議会制民主主義を実質的に否定することから、数多くの論点を内包した複数法案を一括で提出する手法を採らないこと。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出いたします。

平成  年  月  日

議長名

内閣総理大臣
厚生労働大臣
働き方改革担当大臣

メニュー