意見書第26号 特定秘密保護法の制定に反対する意見書について
議決日:平成25年12月24日
議決結果:否決
熊本市議会会議規則第13条第1項の規定により意見書を次のとおり提出する。
平成25年12月24日提出
熊本市議会議員 田辺正信
同 家入安弘
同 上田芳裕
同 東すみよ
同 益田牧子
熊本市議会議長 齊藤 聰 様
意 見 書 (案)
国民の権利を大きく侵す危険性を含む「特定秘密の保護に関する法律」を廃止されるよう要望いたします。
(理 由)
安倍政権は、多くの国民世論がその制定に反対や慎重審議を求める中、12月6日「特定秘密の保護に関する法律(特定秘密保護法)」を強行採決しました。しかし同法は、特定の情報を政府が恣意的に秘密指定できるようにするもので、後世の検証も担保されておらず、国民にはそもそも何が特定秘密なのかすら明らかにされません。国民の「知る権利」や表現・言論の自由、取材・報道の自由を著しく制限しかねず、拙速な制定は将来に大きな禍根を残すものです。
最大の問題点は、特定秘密の定義が極めて曖昧で、行政機関の長の判断次第で恣意的に秘密の範囲が際限なく拡大する危険性が高いことです。秘密を取得した者や漏えいを教唆した者、漏えいや取得を共謀、煽動することも処罰対象となり、処罰範囲がどこまでも広がる恐れがあります。どの情報が特定秘密に指定されたのかも秘密とされれば、その情報が特定秘密かどうかを知らないまま、強く開示を求めた市民や市民運動家、市民ジャーナリスト等が罪に問われるケースもあり得ます。
また、最高懲役10年という厳罰化によって、公務員が記者との接触を過度に避けたり、調査活動をしている研究者や市民が政府情報に近づくことに慎重になり、民主主義の基本である国民の「知る権利」が侵害される恐れが強く、「知る権利」や「報道・取材の自由」への配慮が法に盛り込まれたとはいえ、強制力のない努力規定にとどまる上、報道の「正当な業務」と「著しく不当な方法」の境界線が不明で、取り締まる側が自由に解釈できる余地があります。
さらに、秘密指定の基準作りに有識者会議の意見を聞くとされていますが、形だけのもので個々の秘密指定の妥当性をチェックする権限はないこと、秘密指定は何度でも延長可能で、内閣が認めれば30年を超えて永続的に情報開示を拒むことができること、特定秘密取り扱いの「適正評価」のため行政機関職員や都道府県警察職員、民間業者などの個人情報調査が可能となり著しいプライバシー侵害の恐れがあること、国会へ特定秘密を提供するかどうかは行政機関の判断に委ねられ、提供された情報を漏らせば国会議員も処罰対象になり、国会の国政調査権が大きく損なわれかねないことなど、懸念される点は数多くあります。
国として、特に厳格な管理が必要な情報があることは否定しませんが、その場合も後世に検証可能な制度とすべきであり、政府が持っている情報は本来、国民が共有すべき財産であることが大前提です。特定秘密保護法には、そうした民主主義の基本理念が根本的に欠落している上、情報公開法や公文書管理法の拡充も進んでいません。
何よりも、日弁連をはじめとする法曹界、学者・研究者、言論界などから多くの反対の声が上がっています。パブリックコメントの8割が法制定に反対であり、マスコミ各紙の調査でも反対意見や慎重意見が多数であり、市民の理解を得ているとは到底言えません。
よって、政府におかれては、国民の権利を大きく侵す危険性を含んでいる「特定秘密の保護に関する法律」を廃止されるよう強く要望いたします。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出いたします。
平成 年 月 日
議長名
内閣総理大臣
特定秘密保護法案担当大臣