意見書第14号 解雇の自由化など労働者保護の規制緩和に反対する意見書について
議決日:平成25年6月21日
議決結果:否決
熊本市議会会議規則第13条第1項の規定により意見書を次のとおり提出する。
平成25年6月21日提出
熊本市議会議員 田辺正信
同 家入安弘
同 上田芳裕
同 東すみよ
同 益田牧子
熊本市議会議長 齊藤 聰 様
意 見 書 (案)
労働者保護を後退させ、格差社会を拡大させる規制緩和を実施することのないよう要望いたします。
(理 由)
安倍政権は、いわゆる「アベノミクス」3本の矢の3つ目として、6月にも成長戦略を取りまとめ、その内容を骨太方針に盛り込むことを予定して、政府の経済財政諮問会議や産業競争力会議、規制改革会議での議論が進められています。
その中では、持続的な成長を実現するためには、労働市場改革や雇用制度改革が必要不可欠であるとして、「雇用維持型の解雇ルールから労働移動型ルールへの転換」をうたい、「限定正社員」の導入、解雇を原則自由にするような労働契約法の改正、再就職支援金を支払うことで解雇できるルールづくり(解雇の金銭解決制度)などが提案されています。また、一定の年収以上の人について労働時間を管理しなくてもよい「ホワイトカラー・イグゼンプション」の導入や派遣法のさらなる緩和、労働時間規制緩和なども取り上げられています。
「解雇の金銭解決制度」が導入されれば、如何なる解雇であっても労働者は職場に戻れなくなってしまいます。また「ホワイトカラー・イグゼンプション」の導入によって、何時間残業しても残業代を支払わなくても良くなります。どれだけ働いても残業代が支払われなくなるだけでなく、実労働時間が把握されなくなり、過労死にもつながる長時間労働に拍車がかかりかねません。派遣法を規制緩和の方向に舵を切ることは、派遣労働者の雇用不安定をまたもや増大させることにつながりかねません。
「成長戦略」の名のもとに、働く者の雇用をおびやかすような労働者保護の規制緩和(解雇規制や労働時間規制などの緩和)をすることは認められません。
しかも、こうした議論が行われている「産業競争力会議」や「規制改革会議」などは、使用者側を中心とした人員で構成されており、労働者側のメンバーは一人も含まれていません。労働者・労働組合の意見や利益を代弁する立場にある者抜きに、労働の現場や実態を全く知らない使用者の論理で議論が進められています。
今我が国に求められているのは、不安定雇用や過酷な長時間労働の撲滅・是正、労使の労働条件を実質的にみて対等に決定できる仕組みの構築であります。また、ブラック企業と言われるような労働関係法規を遵守しない使用者に法の遵守を徹底的にさせる仕組みの構築であります。更には、労働法を国民社会に浸透させるための学校、地域、職域、その他で行われる労働者教育を推進する施策の構築であります。労働者保護を後退させ、格差社会を拡大させる姿勢は極めて問題であり、働く者の犠牲の上に成長戦略を描くことなど決して許されるものではありません。
よって、政府におかれては、下記の事項について誠実に対応されるよう強く要望いたします。
記
1 使用者側に立った法制度ではなく、働く人の立場に立った、本来の労働者保護の法制度と理念を維持すること。
2 労働者保護の規制緩和については、人間らしい生活を継続的に営める安定雇用と安心して子育てができるなどの労働環境整備に向け慎重な議論を行い、その実現がされること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出いたします。
平成 年 月 日
議長名
内閣総理大臣
厚生労働大臣