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件名

意見書第15号 国の原子力防災指針の見直しを求める意見書について

本会議議決結果

議決日:平成23年7月1日
議決結果:可決

内容

地方自治法第99条及び第112条の規定により意見書を次のとおり提出する。
 
  平成23年7月1日提出
       
熊本市議会議員  田辺正信
同        家入安弘
同        上田芳裕
同        東すみよ
同        田上辰也
同        福永洋一
同        西岡誠也

熊本市議会議長 津田征士郎 様


                      意  見  書 (案)

原発事故の一刻も早い収束、健康及び環境への被害の拡大回避、事故原因の徹底究明と抜本的な対策を早期に講じられるとともに、国の「防災指針」を見直されるよう要望いたします。

(理 由)
原子力防災対策は、1961年に制定された「災害対策基本法」と、これに基づいて中央防災会議が策定した「防災基本計画」、ならびにこの基本計画に沿って地方公共団体が定めた「地域防災計画」等により必要な措置を講じることとなっています。特に、原子力防災に関する具体的な対策としては、1979年3月の米国スリーマイルアイランド原子力発電所の事故を契機に「原子力発電所等周辺の防災対策について」(以下「防災指針」)が決定されました。「防災指針」は、原子力防災に対する考え方、防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲(EPZ)、緊急時環境放射線モニタリング、災害応急対策及び緊急被ばく医療の実施など、原子力防災活動に必要な技術的・専門的事項が示されています。
1999年9月のJCO臨界事故を受けて、同年12月、初期対応の迅速化、国及び地方公共団体の連携強化、国の対応機能の強化や原子力事業者の責務の明確化等を柱とする、原子力災害対策特別措置法(原災法)が制定され、事故発生時の通報基準、災害対策本部の設置などの初期動作の迅速化、国、都道府県、市町村の災害活動を調整し円滑に進めるためのオフサイトセンターの設置、防災に関わる原子力事業者への指導、緊急時における情報の収集などを行うための原子力施設所在地への原子力防災専門官の設置などが定められました。そして、2000年5月、「防災指針」もEPZの対象施設の拡大、核燃料物質の放出や臨界事故への対応など大規模な見直しが行われ、題名も「原子力施設等の防災対策について」として改訂されました。
その後、「防災指針」は、緊急被ばく医療体制の構築、安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策及び原子力災害時におけるメンタルヘルスに関する対策など、随時の改訂が行われています。
しかし、今回の東北地方太平洋沖地震及びそれに伴い発生した大津波を契機とした福島第一原発事故で、これまでの原子力防災について様々な問題点が明らかになってきました。
よって、政府におかれては、原発事故の一刻も早い収束、健康および環境への被害の拡大回避、事故原因の徹底究明と抜本的な対策を早期に講じられるとともに、各自治体の「地域防災計画」のガイドラインとなる国の「防災指針」を見直されるよう、下記の事項の実現を強く要望いたします。

                        記

1 オフサイトセンター(緊急事態応急対策拠点施設)の強化機能について
@今回の震災で被害を受け、原子力緊急事態が発生した場合の拠点となるオフサイトセンターの機能のほとんどが失われたことを踏まえ、現状のオフサイトセンターの耐震性の強化、津波対策に万全を期すこと。
A原災法施行規則第16条のオフサイトセンターの要件を抜本的に見直すこと。
B地震時に有効に機能するように、原災法施行規則第16条第12号に定める代替施設をあらかじめ準備するとともに、施設の設備についても十分な機能を持つよう充実すること。
2 モニタリングポストの地震対策について
モニタリングポストの耐震性の向上と津波対策を図ること。
3 住民避難に必要な情報の開示について
放射性物質の拡散を予測する国の「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」の拡散試算図の即時公表を行うこと。
4 EPZの範囲の拡大について
現行の「防災指針」は、「防災対策を重点的に充実すべき範囲(EPZ)」を原子力発電所の「半径8〜10キロ」としているが、福島の事故を踏まえ、最低限30キロの範囲に拡大すること。また、気象条件や地理的条件により、放射能汚染箇所が範囲内を超えることもあることを踏まえて対応すること。
5 防災(避難)訓練の実施について
@今回の福島原発事故を踏まえ、画一的なシナリオ通りの訓練ではなく、訓練シナリオを参加者に明示しない「ブラインド訓練」や「抜き打ち訓練」など、訓練のあり方を見直すこと。
  A現行の防災指針では地震や津波によって、原発が重大事故を起こすことが想定されていないため、地震災害及び津波被害による原発事故時の対応を取り入れた計画にすること。
6 被ばく患者の治療及び搬送体制の整備について
@緊急被ばく医療機関の多くが20キロ圏内にあり、十分   な機能を発揮することができない現状にあることから、人材と機材確保のための体制を整備すること。
A緊急被ばくの応急処置及び治療のため、初期被ばく医療機関、二次被ばく医療機関、三次被ばく医療機関のそれぞれの役割に応じて実施するために必要な資機材、設備等の整備、搬送体制の確立を進めること。
7 安定ヨウ素剤の備蓄及び配布について
  周辺住民等の健康に影響を及ぼす恐れのある放射性ヨウ素の取り込みによる甲状腺被ばくを予防するため、安定ヨウ素剤の備蓄・配布体制の充実を図ること。
8 地域防災計画の見直し支援について
  今回の福島原発事故を踏まえ、自治体で独自に地域防災計画を見直す動きに対し、必要な技術的援助を行うとともに、財政的支援を行うこと。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出いたします。
  
平成  年  月  日

議長名
   
内閣総理大臣
  総務大臣
   財務大臣
   厚生労働大臣
   防災担当大臣

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