意見書第12号 熊本市議会「がまだす」条例の制定について
議決日:平成21年9月18日
議決結果:否決
地方自治法第112条の規定により、熊本市議会「がまだす」条例案を次のとおり提出する。
平成21年9月9日提出
熊本市議会議員 下川 寛
同 白河部貞志
同 田尻清輝
同 藤山英美
同 田尻善裕
同 島和男
同 大石浩文
同 重村和征
同 田中敦
熊本市議会議長 竹原孝昭 様
熊本市議会「がまだす」条例(案)
目次
前文
第1章 総則(第1条・第2条)
第2章 議員の定数等(第3条・第4条)
第3章 議員としての活動規範(第5条〜第8条)
第4章 議会の権能(第9条〜第12条)
第5章 委員会(第13条)
第6章 調査(第14条〜第16条)
第7章 議員の歳費(第17条)
第8章 市民意見の聴取及び議会の評価(第18条〜第20条)
第9章 議会の公開(第21条〜第23条)
第10章 雑則(第24条・第25条)
附則
熊本市議会は、明治22年の発足以来、言論の府として二元代表制の一翼を担い、執行機関との緊密な連携及び協議を通じてその役割を全うしてきました。しかし、近年の地方分権の推進という流れや、さらなる市民ニーズの多様化により、議会をめぐる既存の制度が変更されているものの、さらなる議会の変革が、全国の地方議会においても検討されています。
本市議会としては、真の地方自治の実現のために、住民の負託に的確にこたえるべく一層の自己変革が求められていることを強く自覚し、市民を代表するものとして、時代と意識の変化に的確に対応しながら、本市の未来を見据えた活動を行うことを決意しました。
そこで、本市議会は、最終意思決定機関としてだけでなく、市民と市の未来に向けて、その職責をより果たせる議会になるために、既存の法に定めのない手続きを定めることで、市民参加と情報公開を柱とした新たな議会制度の構築を目指し、この条例を制定するものです。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、議会及び議員が、住民の負託を受けた代表者として適正かつ効
果的に機能することを期し、地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」といいます。)その他法令に定めるもののほか、議会運営に関する制度、議会及び議員の権能に係る事項等を定めることにより、議会活動の一層の充実を図り、もって、市勢の発展に寄与することを目的とします。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによります。
(1) 市長等 市長、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会、監査委員、農業
委員会、固定資産評価審査委員会、公営企業管理者及び消防長をいいます。
(2) 住民 本市の区域内に住所を有する者をいいます。
(3) 市民 次のいずれかに該当する者をいいます。
ア 住民
イ 本市に通勤し、又は通学する者
ウ 本市の区域内で事業を営み、又は活動する個人及び法人その他の団体
(4) がまだす 熊本における方言で、働く、励む、精を出す、がんばるという意味
を表わします。
第2章 議員の定数等
(議員の定数)
第3条 議員の定数は、法第91条第1項及び第2項の規定により48人とします。
(会議)
第4条 法第102条第2項の規定に基づき、議会の定例会の回数を毎年4回としま
す。
第3章 議員としての活動規範
(議員の責務)
第5条 議員は、議会活動を行うに当たっては、市民の代表としての良心と責任感を
もって品位を保持し、識見を養うとともに、熊本市政治倫理条例(平成2年条例第34号)に定める政治倫理に関する規律の基本となる事項を尊重しなければなりません。
(議員の資質向上)
第6条 議員は、常に自己変革を心がけ、その識見を養うため、議会が開催するもの
を始め、各分野で実施される研修に積極的に参加し、議案の発議や議決に関する知識を取得するよう努めなければなりません。
(資産公開)
第7条 議員は、別に定めるところにより、毎年その資産の増減を議長へ報告するこ
ととします。
(議論の活性化)
第8条 議員は、会議における発言に際し、広く論点、争点を明確にするため、議論
を深めるよう努めるものとします。
2 前項の議論に当たっては、より有効な議論となるよう、市長等その他の説明員が反問することを妨げません。
第4章 議会の権能
(議決すべき事件)
第9条 市長は、法に定めるところによるほか、次に掲げる事件について、議会の議
決を得なければなりません。
(1) 法第2条第4項に規定する基本構想に基づき市政の基本的事項について作成する基本的な計画の策定、変更又は廃止
(2) 予定価格3億円以上の工事若しくは製造の請負又は委託に係る契約
(3) 予定価格3,500万円以上の不動産若しくは動産の買入れ若しくは売払い又は不動産の信託の受益権の買入れ若しくは売払い
(調査機関の設置)
第10条 議会は、市政の課題に関する調査のため必要があると認めるときは、議決
により、学識経験を有する者等で構成する調査機関を設置することができます。
2 前項の調査機関に関し必要な事項は、議長が定めます。
(調査補助)
第11条 議会は、当該議員を含め定数の12分の1以上の議員の連名をもって
市政の課題に関する調査研究のための補助員の要請があった場合、別に定めるところにより、議会事務局から補助員を派遣させることができます。
2 議会は、議員の調査研究に資するため、別に定めるところにより議会内に図書室
を設置します。
(議案上程)
第12条 議会は、市政に係る重要案件について議会の議決をすることが見込まれる
場合において、その前の定例会において、議案について意見の聴取をする協議の場とするために、市長に協議案を上程するよう求めることができるものとします。
2 前項の求めに対し、市長はできる限り応じるよう努め、上程に際しては、その上程に到るまでの検討から決定までの経緯を資料として添付するものとします。また、市長が必要と認めた議案についても同様とします。
3 協議案に対してなされた議論における意見には、市長はその後の議案作成に当たり最大限に配慮するとともに、必要に応じ修正したものを議案として提出しなければなりません。
第5章 委員会
第13条 議会に、法により制限される内容以外について、議員相互の議論を含む自
由な発言ができる場として、別に条例で定めるところにより、常任委員会及び議会
運営委員会並びに必要に応じ特別委員会を設置します。
第6章 調査
(議員の調査権等)
第14条 議員は、市政に係る事項について、個人情報保護等の関連法令の範囲内
で、市長等に対して調査をすることができるものとします。
2 前項に規定する調査(以下「市政調査」といいます。)に関し市長等の書面による回答を得ようとする議員は、あらかじめ当該市政調査に関する事項を、当該議員を含め定数の12分の1以上の議員の連名をもって、議長を経由して当該市長等に提出するものとします。
3 市政調査を行った議員は、その結果を、申し出た議員の連名をもって議長に書面で報告しなければなりません。
4 前2項に規定する書面については、熊本市個人情報保護条例(平成13年条例第43号)第8条の規定は、適用しません。ただし、当該書面を提出しなければならない者以外の者に当該書面の内容に係る情報が提供される場合は、この限りではありません。
(調査のための費用)
第15条 法第100条第14項に規定する政務調査費に関しては、議員による政
策研究、提言等が確実に実行されるような調査のための費用として、熊本市議会政務調査費の交付に関する条例(平成13年条例第8号)等の定めるところにより交付されます。
2 政務調査費の交付を受けた議員は、熊本市議会政務調査費の交付に関する条例等に基づきその活動内容及び収支を報告します。
3 前項の報告は、熊本市情報公開条例(平成10年条例第33号)等の定めるところに基づき、開示されます。
(議案の提出に伴う意見募集)
第16条 市政調査の結果に基づき、条例等の議案を提出しようとする議員は、その
議案の内容に関し、定数の12分の1以上の議員の連名をもって、別に定めるところにより、市民に対して意見募集を行うよう議長に依頼することができます。
2 前項の意見募集に関し必要な事項は、議長が定めます。
第7章 議員の歳費
第17条 議員の身分を保証するため、議員には、法の規定に基づき、別に条例で定めるところにより歳費が支給されます。
第8章 市民意見の聴取及び議会の評価
(市民報告会)
第18条 議会は、毎年度、市民報告会を全議員の運営により開催します。
2 前項の市民報告会は、市民センター(五福地域開発センターを含みます。)及び総合支所の所管区域(各所管区域に属しない地域にあっては、別に定める区域をいいます。以下同じです。)ごとに開催し、議員は、自身の居住地が属する所管区域に係る市民報告会には、参加できないものとします。
(評価)
第19条 議会は、別に定める無作為抽出アンケート、議会モニター等の手法によ
り、毎年度、市民からの評価を求め、その結果を分析した上で、活動の指針として
最大限に考慮しなければなりません。
2 前項の結果は、別に定めるところにより公表されますが、その内容について議会
が必要と認めた場合は、これを非公表とすることができます。
(市民会議)
第20条 議会は、市民の意見を公的に聴取し、参加者と議論のできる場として、市
民を対象とし、議会に設置した委員会の所管事務に関し、あらかじめ議題を定めた上で、委員会ごとに公開の場での会議(以下「市民会議」といいます。)を開催します。
2 市民会議に必要な事項は、別に定めます。
3 市民会議の議題は、市民生活に関連する重要案件に関するものでなければならな
いほか、その内容が一部の分野に偏らないよう配慮されるものとします。
4 市民会議で市民から出された意見は、内容を精査した上で、議決や発議の場で最大限に尊重されるものとします。
第9章 議会の公開
(会議の公開)
第21条 熊本市議会会議規則(昭和34年議会規則第1号)等の定めるところによ
り運営される定例会その他の議会の会議は、別に定める方法を通じて公開されるとともに、議会だよりなどの手法により、広く市民に広報されます。
(議決の公開)
第22条 議会が会議により議決を行った場合は、その議決の内容及び議員個人の議
決に対する態度を市民に公開します。
(インターンシップの受入れ)
第23条 議会は、青少年に対し、市政への参加意識及び市政への参加意欲を醸成す
るため、市内の大学及び専門学校と提携し、その学生のインターンシップによる活動を受け入れるものとします。
2 前項の受入れに関し必要な事項は、別に定めます。
第10章 雑則
(改正要求)
第24条 議員は、この条例の改正又は廃止に係る議案(以下「改正等議案」といい
ます。)の提出について、本市において選挙権を有する者の総数の50分の1以上の者の連署をもって、別に定めるところにより要求があったときは、当該改正等議案を、法の定めるところにより市議会に提出しなければなりません。
2 改正等議案が議会に提出されたときは、議会は、議員と市民とにより構成される合議体を別に定めるところにより設置し、検討を行うものとします。
3 改正等議案を議会で審議する場合は、その背景及び理由並びに検討経過について、提案理由において明確に説明されるものとします。
(委任)
第25条 この条例に定めるもののほか、議会及び議員の活動に関する必要な事項は、
別に定めます。
附 則
(施行期日)
1 この条例は、平成22年4月1日から施行します。
(既存条例等の廃止)
2 次に掲げる条例は、廃止する。
(1) 熊本市議会の定例会の回数に関する条例(昭和31年条例第22号)
(2) 熊本市議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例(昭和39年条例第16号)
(3) 熊本市議会議員定数条例(平成12年条例第3号)
(4) 地方自治法第96条第2項の規定により議会の議決すべき事件を定める条例(平成19年条例第61号)
(熊本市議会議員の議員報酬、期末手当及び費用弁償に関する条例の一部改正)
3 熊本市議会議員の議員報酬、期末手当及び費用弁償に関する条例(昭和25年告示第32号)の一部を次のように改正する。
題名中「議員報酬」を「歳費」に改める。
第1条中「議員報酬」を「歳費(地方自治法(昭和22年法律第67号)第
203条第1項に規定する議員報酬をいう。以下同じ。)」に改める。
第3条及び第4条中「議員報酬」を「歳費」に改める。
(提出理由)
市民と市の未来に向けて、その職責をより果たせる議会になることを期して、市民参加と情報公開を柱とした新たな議会制度を構築するため、この条例を制定するものである。