意見書第10号 環境ホルモン対策に関する意見書について
議決日:平成10年6月17日
議決結果:可決
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発議第一〇号
環境ホルモン対策に関する意見書について
地方自治法第九十九条第二項及び第百十二条の規定により意見書を左の通り提出する。
平成十年六月十七日提出
熊本市議会議員 江 藤 正 行
同 内 田 三千夫
同 竹 本 勇
同 嶋 田 幾 雄
同 税 所 史 熙
同 奧 田 光 弘
同 田 尻 将 博
同 大 石 文 夫
同 牛 嶋 弘
同 上 村 恵 一
同 田 辺 正 信
同 磯 道 文 徳
同 鈴 木 弘
熊本市議会議長 主 海 偉佐雄 殿
意 見 書 (案)
環境ホルモン対策を早急かつ抜本的に講じられるよう強く要望いたします。
(理 由)
近年、環境中に存在する化学物質が、ホルモンと類似の作用により健康や生態系に様々な悪影響を及ぼしている可能性があることが報告され、大きな不安と関心を呼んでいます。
環境ホルモン(外因性内分泌かく乱化学物質)は、極微量でも生体が本来持っているホルモンと同じような働きをして生体をかく乱するため、人及び生物の発育・生殖機能等に打撃を与え、精巣・乳がん等の誘発や精子減少等を引き起こす恐れがあり、人類の存続にとって深刻な影響を及ぼしかねないことが国際的に強く懸念されています。
このことについては、かねてよりWHO(国際保健機関)、IPCS(国際化学物質安全計画)が指摘しており、最近ではIFCS(化学物質に関する政府間フォーラム)もその重大性を確認しています。
環境庁が設置した研究班による中間報告において、内分泌かく乱性を持つと疑われている化学物質としてダイオキシンやPCBなど約七十物質が指摘されており、食品の容器・包装、合成洗剤、塗料、農薬、医療品、化粧品、虫歯への充てん材、プラスチック材料など、日常生活のあらゆる分野に環境ホルモンがあふれているといっても過言ではありません。
よって、政府におかれては、体内蓄積型の化学物質に関する「国民の知る権利」とともに、「地域の知る権利」の確立と、「疑わしきは予防する」との予防原則の立場から、関係省庁及び研究機関等が欧米諸国に比べて立ち遅れている環境ホルモンの調査研究に早急に取り組むとともに、次の事項について被害が拡大する前にできるところから速やかに実施されるよう強く要望いたします。
記
一 政府内に環境ホルモン問題対策部門を創設するとともに、研究機関の整備と予算措置の飛躍的拡大を図り、調査研究の一層の推進を図ること。
二 全国の大気、土壌などの影響調査及び人への健康影響調査を行うなど環境ホルモン緊急総点検(安全性実態調査)を実施し、その公表を図る他、猛毒ダイオキシンと類似した生体作用を示すコプラーナPCB、臭素系ダイオキシンの環境規制基準を定め規制強化を図ること。
三 化学物質安全基本法及び環境汚染物質排出・移転登録(PRTR)の法制化や、事故などの緊急時における化学物質危機管理体制の構築を図るとともに、製品が与える環境負荷を事業者等が事前評価するLCA(ライフサイクル・アセスメント)の導入を図ること。
四 世界的な有害化学物質の越境汚染を防止するため、残留性有機汚染物質(POPs)に関する国際議定書の制定や、有害な化学物質及び農薬の国際貿易のおける事前通報・合意(PIC)手続きに関する条約の早期採択、さらには化学物質に係る国際安全基準等を規定する国際条約化を推進すること。
五 環境ホルモン汚染を防止するため、食品衛生法の規格・基準の強化や、環境ホルモン影響評価に対応するため化学物質審査法等関係法律を見直し、規制対象物質の拡大など監視を強化すること。
六 農薬取締法の見直しを図り、全農薬の再評価の実施と使用量削減プログラムを策定し、実施すること。
七 食器等で使用されているPC(ポリカーボネイト)製品の製造・販売・輸入の禁止を含め、予防原則による製品規制を図るとともに、環境ホルモンに替わる代替物質の開発支援措置を講ずること。
右、地方自治法第九十九条第二項の規定により意見書を提出いたします。
平成 年 月 日
議 長 名
内閣総理大臣
法務大臣
外務大臣 宛(各通)
農林水産大臣
科学技術庁長官
環境庁長官
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