意見書第6号 日米ガイドライン関連法案の慎重審議と国民的論議を求める意見書について
議決日:平成11年3月11日
議決結果:否決
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発議第六号
日米ガイドライン関連法案の慎重審議と国民的論議を求める意見書について
地方自治法第九十九条第二項及び第百十二条の規定により意見書を左の通り提出する。
平成十一年三月十一日提出
熊本市議会議員 大 江 政 久
同 上 村 恵 一
同 田 辺 正 信
同 東 すみよ
同 佐々木 俊 和
同 中 松 健 児
同 小 山 久 子
熊本市議会議長 主 海 偉佐雄 殿
意 見 書 (案)
憲法に抵触し安保条約を逸脱する恐れのある「日米防衛協力のための指針」関連法案の慎重審議と、国民的論議を広く進められるよう強く要望いたします。
(理由)
二十一世紀を目前にした今日、人類にとって世界を平和と希望の世紀とするか、それとも他国を恐れて軍拡と戦争協力の道を選択するのか、極めて重大な岐路にたっています。
昨年、四月二十八日に閣議決定され、国会に提出中の「周辺事態法案」「自衛隊法の一部改正案」「米国との物品役務相互提供協定改正案」(ACSA協定改正案)二法案一協定は、二十一世紀における日本の進路と世界平和にとって逆行するばかりか、日本の国内における不安と疑問はもとより、東アジア諸国に不信と脅威を与えています。
九〇年代前半は、米ソ両国の対立による冷戦構造の終焉によって、軍事費の削減、核軍縮と多国間の安全保障協力が推進されました。しかし後半は、冷戦が終焉したにもかかわらず、冷戦構造の意識は温存され、日米ガイドライン関連法案に示されるように、有事を想定した戦争協力の準備が進んでいます。
これらの法案は、日本の防衛というより、有事を想定した米国の武力介入に日本が協力するための法的整備のためのものであります。極東の範囲を周辺事態という曖昧な規定に改め、自衛隊の海外派兵と武器使用など海外における集団的自衛権の行使に道を開き、安保条約を逸脱し、憲法に抵触する危険性をはらんでいます。また、国会の承認を避けて事後報告で済ませようとすることは、日本政府がこれまでとってきた専守防衛、シビリアンコントロールなど防衛政策の基本を大きく変えることになります。
さらに問題なのは、有事を想定し、自治体に協力を求めることができるとして、空港、港湾、補給、輸送、修理及び整備、医療、通信など地域住民の生活と安全に重大な影響を与えかねません。
日本政府の動きを注目している中国や韓国、北朝鮮などの周辺諸国は、有事を想定した日米防衛協力強化と拡大によるこれらの動きを脅威として受け止めており、結果として平和と友好に逆らう事態を生みだしています。日本は、第二次世界大戦を誘発した国として、村山元総理大臣の談話に示されたように、戦後五十三年を経たとはいえ、周辺諸国はもとより世界各国に向かって、お詫びの気持ちを真摯な態度で現し、平和のための外交政策の展開こそ第一義としなくてはなりません。
しかも、防衛庁と防衛産業のそこ知れない癒着による疑惑が国民の前に浮上している折り、政府は誠実かつ謙虚な態度で国民に接し、強硬な立法化に突き進むのではなく、疑惑解消と再発防止に全力を挙げるべきものといわざるを得ません。
よって、政府におかれては、いま二十一世紀に向けた日本の進路と世界の平和に重大な責任を果たすべき時、疑義のあるこれらの法案を国会で慎重に扱い、地域住民、自治体、自治体職員や港湾で働く人々、有識者などの意見に謙虚に耳を傾け、広く国民的議論を起こし、安易に強硬な態度で立法化されることのないよう強く要望いたします。
右、地方自治法第九十九条第二項の規定により意見書を提出いたします。
平成 年 月 日
議 長 名
内閣総理大臣
外 務 大 臣 宛(各通)
防 衛 庁 長 官
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